【報告】赤い羽根 居場所を失った人への緊急活動応援助成事業完了のご報告
2021年6月から2022年3月まで、当法人は赤い羽根新型コロナ感染下の福祉活動応援全国キャンペーン居場所を失った人への緊急活動応援助成を受け、コロナ禍で始まったたまりばフードパントリーやえんくる食堂で出会った方々の相談支援事業を実施いたしました。赤い羽根共同募金を通じて、本事業を応援くださった皆様に、心より感謝申し上げます。
この事業で見えてきたこと
コミュニティスペースえんくるでは、フードパントリーを利用される方が1日平均8名ほど、多世代型こども食堂である「えんくる食堂」では1回に約50名の利用があります。本相談事業では、こうした方々と接する中から相談につなげる相談支援事業を行いました。この事業を通じて、食支援を利用している利用者がコロナ禍で深刻な事情を抱えがちで、食支援以外の支援も必要している様子がよくみえてきました。困難の状況もとても多様で、かつ課題が複合しており、地域でもさまざまな人と共に包括的なサポートをすることが必要な方が多くいらっしゃいました。
こうした困難は来てすぐにお話してくれたものではなく、どのかたもパントリーやえんくる食堂に通ううちに、次第に話してくれうようになりました。SOSを安心して出すためには、地域の中で居場所が必要であること、そしてコロナ禍でこうした居場所を失った方々が地域にたくさんいらっしゃるのだということが見えてきました。
こうした多様なSOSにわたしたちだけで応えることはできませんでした。社会福祉協議会、市内各区役所のみまもり支援センター(福祉事務所)、生活困窮者自立支援制度、児童相談所、医療機関、弁護士、臨床心理士、そして地域で子どもの貧困に関心を持ち行動する住民と手を取り合って、様々な方を支えました。保護者が疾患を抱えるヤングケアラー、ひきこもりや不登校、障害をもつ子どもと孤立して悩むシングルマザーたち、実家を頼れない若者たち。。。さまざまな方とつながり、一緒に考えていきました。そんな中で新入学・新生活に必要なものを寄付であつめ、必要な方に使ってもらう、地域ぐるみの支援も生まれました。
これからの実現したい私たちのまち
こうして出会った人たちと一緒に考え、動いていく中で、私たちのまちの課題が見えてきました。
ひとつは、新型コロナウィルス感染拡大下での緊急支援として行われた相談事業でしたが、寄せられた相談の多くは、コロナ禍以前の生活課題がここにきて吹き出したものだったということです。一見新型コロナの影響による減収も、丁寧耳を澄ませば、短期間の減収で生活が立ち行かなくなってしまったような以前からの生活基盤の脆弱さがあったからでした。コロナ禍が過ぎたとしても、私たちがこの相談を続けて、地域に根ざして活動を続けていくことが必要だと感じました。
もう一つは、地域でこどもの貧困への関心が高まり、フードドライブ、こども食堂など、住民主体の食支援が広がっている一方で、そこにやってくる方々の苦しさが必ずしも十分に受けとめられておらず、食支援以外の支援、サポートにつながる道筋が整備されていないようにみえることでした。子どもたちや子育てをする親たち、若者たち、その他さまざまな困難を抱える方々の暮らし全体を支えるまちづくりが求められていると感じます。
また、今回明らかとなった支援ニーズは極めて多様で複合したものでした。地域での専門職によるアウトリーチや敷居の低い相談を充実させる必要がありますし、個人や世帯の抱える深刻な状況の全体像が明らかになるには、SOSを出しやすい関係性や居場所が地域に必要だと痛感しました。これからも、緊急事態の有無に関わらず、誰もが居場所を持ち、困ったときにはSOSの出せる関係性のあるまちを実現するために、尽力してまいります。